コピック・失敗しないための基礎知識・実践編
はじめに
前回の記事
ではコピックの性質と、コピックと紙の関係について解説してみました。
今回はそれを踏まえて、実戦で解説をさせていただきたいと思います。
色ムラの解消法
まずコピックを使い始めたばかりの人は、コピックの性格・性質をまだ知らない状態の方がほとんどで、どうしてもこういった状態になってしまいがちです。
ですがコピックは染める画材っていうことを理解してもらうと、この状態をクリアするのはとても簡単です。
上の色ムラが出た状態というのは、
コピックを塗る道具として考え、そしてそう考えた状態で使ってしまっているから起きる症状だといえます。
デジタルのように、
「筆のサークルを動かした場所に均等に色が付く」という感覚がコピックでは通用しないのです。
ここで、色ムラが出てしまう色の付け方を動画で見てみましょう。
コピックの悪い色の付け方と、良い色の付け方の動画作ってみました。
— ゆうす湖♨️ (@yousko_2nd) 2019年3月12日
使用はB34で、用紙はマルマンのスケッチブック。
一本の動画を分割してあります。
まず前半、ムラだらけになる悪い例。
ザカザカとあっちこっちに筆を動かすと、こういう風にムラになりやすいです。#コピック会議 pic.twitter.com/zo3a6GauXF
丸の中をブラシがあちこちに動いてしまっていますよね。ですが間違いなくサークルの中全体を筆が動いています。
次に、色ムラの出にくい色の付け方を見てみましょう。
次が全体的に色が均質になる良い例。
— ゆうす湖♨️ (@yousko_2nd) 2019年3月12日
よく言われる「筆を回すように」というのはこういう感じです。
フチに多少白い部分が残ったとしても、染み込んだインクがじんわり広がるので、結果として綺麗に色が入ります。
「じんわり色が広がる」度合いが、それぞれ紙によって違います #コピック会議 pic.twitter.com/6mDu9HcNQl
ブラシは一定の速さで円を描くように、サークルの中全体をしっかりと筆が動いています。
結果の画像
円の中全体をブラシが動いたのに、なぜこのような違いになってしまったのでしょうか。
コピックの色がつく仕組み
コピックは紙と接したブラシの先から、染料(色の材料)が溶け込んだアルコールインクが紙に染み込むことで色が付きます。(図1)
図1
紙とブラシが接した状態で動かすと、それに合わせて順にインクが紙に染み込んでいくという仕掛けとなっています。(図2)
図2
色ムラがある状態を言い換えるなら、紙にインクが均等に染み込んでいない状態とという事です。
ムラができる理由とその対策
色ムラの理由の解説を始める前に、
「コピックは染める画材」
という言葉を思い出しつつこの章を是非読んでください。
色がムラになってしまうとき、紙の中ではこういう事になっています。。。(図3)
図3
濃いところはしっかりとインクが入っているのですが、薄いところはしっかりとインクが入っていません。
こうなる理由としては、
- ブラシのスピードが一定では無い(場所によっては早くなったり、遅くなったり、止まったりしている)
- 1度塗り・2度塗り・3度塗りの状態が混ざってしまっている(一度ブラシが通った箇所を何度も通過する)
- 紙質自体がそもそも均質ではないことがある(製造の過程で紙の繊維がダマになってしまっている、湿気ている、表面が油分で汚れているなどなど、色が入りにくい状態になっている)
ということが言えます。
3に関してはコピックではなくて紙に関する性質と問題であったりするので、ここでは触れません。
先に示した図の例ですと、濃いところはゆっくりと、薄いところは早くブラシが動いてしまったということになります。(図4)
図4
もう一度図1を見てください。
図1
コピックはブラシ先から紙にインクが染み込んで色がつくので、
ブラシの動きが早いと、インクの染み込み時間が短い
ブラシの動きが遅いと、インクの染み込み時間が長い
となります。
早く動かせばインクが染み込みずらいので、それだけインクの染みは浅くなり、薄い色に見え、
ゆっくり動かせばインクが深く染み込み、その分濃い色に見えます。
つまりムラのない仕上がりにするには、
紙の上を出来るだけ一定の速さでブラシを動かして、なるべく均等にインクを染み込ませる
ということが大事になってきます。
ブラシをくるくる回して動かす方法は、速度を一定に保つことで、紙に染み込むインクの量を一定にできるという効果を得られます。
図5、なるべく均一にインクを染み込ませる様にブラシを動かすのがコツ
「コピックは染める画材」と説明したのがここで活きてきます。
コピックを扱う時は、
塗っているのではなく染めている
という感覚の方が、ムラが少ない仕上がりに近づける第一歩です。
もしムラになるなと思った時は、一度自分が塗っている時のブラシの動きをよく観察してみてください。
きっとその中に、ムラになりやすい原因が潜んでいます。
動画解説
ここからら先程の動画の解説に入らせていただきます。
前半部分で言いたいことは言えたので、あとは詳しく知りたい方向けです。
まず1本目の動画で塗ったもの(画像左)ですが、まず円の真ん中あたりを広い範囲で折り返しながら色を入れました。
図6
次に、その塗った外側の白い部分をなくすような形でを入れました。
図7
こうした動きをした結果、仕上がりがムラになってしまいました。
先の章で書いたムラになる原因1と原因2をやってしまっているのです。
先ほどの筆の動きを、全部合わせるとこうなります。
図8
すると
図9
ピンク色で示した部分でブラシのストローク折り返しが固まり過ぎています。この部分だけ2度塗り、3度塗りされたような状態です。
逆に
図10
水色で示した部分はブラシのストロークが少ない状態になっています。せいぜい1度塗りか2度塗りされたくらいの濃さになっています
つまり、
ブラシの動きの不均一さが色ムラの原因になっているのです。
体育の反復横跳びで、長い距離の横跳びと短い距離の横跳びとでは往復の速さが違いますよね、あれと同じように、真ん中の部分を広く塗った部分のスピードと、両端を塗った時のスピードは全然違ってしまっているのです。(原因1・スピードが一定ではない)
また、白い部分を無くすために、初めに塗った部分にブラシがオーバーラップしてしまって、余計に濃くなっています。(原因2・重ね塗りの混在)
次に均質に仕上げられた方のブラシの動きを見てみましょう。
図11
ギザギザした動きではなく、小さく円を描くような動きで、サークルの中全体を走っています。
動画では、色付け初めから終わりまで、常にブラシが一定の速さで動いているのが観れたと思います。
改めて仕上がりを見てみましょう。
図12
このような感じになっています。
最後に
ムラのない仕上がりにするための解説は以上で終わりです。
この場を借りて一つだけお伝えしておきたいことがあります。
引用で用いたツイッターの解説動画のポストで「悪い色の付け方良い色の付け方」という表現を用いたのですが、これに関しては私の表現が間違っていたと撤回させていただきます。
色ムラというのは必ずしも悪いことではなく、それもコピックが出せる味と言えます。
そういった表現が必要な場合もあり、逆にムラを出すことで最適な仕上がりになることもあるので、色ムラ自体が常に悪いわけではありませんし、それを狙った塗り方が必ずしも悪いわけでもありません。
あくまで、仕上げたい状態に対して最適な塗り方を選ぶことが重要です。
今回はムラの無い状態にしたい、でもできない・・・という方のために、その方法を解説したいと書かせていただいた記事ですので、その点ご理解いただければと思います。
ムラのない仕上がりを得たい場合は
ブラシの速度を一定に保ち、色を入れたい箇所になるべく均等にインクを染み込ませること
これが重要という記事でした。
読んでくれた方が少しでも楽しく絵が描けるようになってくれることを願っております。
オマケ
ギザギザストロークとぐるぐるストロークの仕上がりの違いの動画です。
ストロークだけに注目して見ていただけるように新たに録画してみました。
塗りたい場所と得たい仕上がりに応じて、ストロークを使い分けてみてください。
ぜひ一度コピックを手に取って、同じように真似してみてもらえれば、どんなふうになるのか感覚が良くわかると思います。
今回のブログ作成にあたって使った画材は
コピックはB34
用紙はマルマンスケッチブック
です。
ギザギザストローク
前回のコピックの塗り解説に反響があったので、新たに説明の動画を作ってみました。
— ゆうす湖♨️ (@yousko_2nd) 2019年3月17日
ギザギザストロークとぐるぐるストロークの色のつき方の違い。
ギザギザだと、折り返すポイントでブラシのスピードが落ちて、インクが染み込み過ぎ、結果色ムラになっています。#コピック会議 pic.twitter.com/CRbFfzDMc0
ぐるぐるストローク
今度は同じくらいの範囲をぐるぐるストロークで。
— ゆうす湖♨️ (@yousko_2nd) 2019年3月17日
先ほどと違い、常にブラシが一定の速度を保って紙の上を滑っているため、「折り返す」ことがなく、結果ブラシが動いた範囲へ滑らかに色が入っています。
紙は前回同様、用紙はマルマンスケッチブック、コピックはB34です。#コピック会議 pic.twitter.com/V9HfNnfWaQ